(多分世界初!)3Dプリンターで篠笛を作ってみた:モデル製作〜到着編

多分世界ではじめて3Dプリンター製の篠笛を製作しました。

きっかけ:

完成した3Dプリント篠笛

完成した3Dプリント篠笛

1. はじめに:アイデア

篠笛は、女竹(篠竹)に穴を開けて作られたシンプルな横笛です。
女竹に漆を塗り籐を巻いて仕上げたものから、安価な量産のプラスチック製篠笛まであります。
これまでの篠笛製作の延長として、今回は「3Dプリント」で、「実用的」で「美しい」篠笛の製作にチャレンジしました。
・3Dモデルから篠笛を製作することで、同じ音階の篠笛を複数用意できる。
・市販プラ管は、7本調子・8本調子のみ。今回は6本調子を製作する。
・これまでに試したことのない素材なのでどのような鳴りになるのか。
・事後加工による鳴りの調整とビジュアル・仕上げ方法の検討。

2. 設計のポイント

  1. 唄用6本調子(Bb管)- 呂音(低音)の鳴りと、ピーヒョロしたときの甲音(高音)の鳴りのバランスがよく、個人的に好きな調子。市販プラ管がカバーしていない調子であり、出来と価格によっては安価な篠笛のバリエーションとして需要があるかも。
  2. 篠笛は管尻にかけて若干細くなるテーパー構図をしている。これは素材である竹の特徴。単純な円柱構造の篠笛も製作可能だが(市販プラ管や自作塩ビ管ではそうなる)、テーパー構造にともなう管内の径の変化は、適切な音階を与える指穴の位置や吹き心地(圧力の逃げ方)にも影響を与えている。3Dプリントでは厳密な寸法設計と再現が可能であることから、テーパー構造を設計に組み、管頭から管尻にかけて内径が 1 mm 縮小する形状とした。
  3. 素材は DMM 3Dプリントで選択できるなかで最も軽量・安価なナイロン(ポリアミド)を想定。市販プラ笛は低音の鳴りの豊かさに欠けるが、この原因が比較的硬質な素材によるものだと推測している。低音〜高温の鳴りのバランスの良い素材を探索するため、最も粗な素材として選択した。

3. 3Dモデルの製作

今回も出力は、DMM 3Dプリントを利用。モデリングソフトは、Shade 3D の体験版を使用しました。体験版は全エディションから自動毎に選んで試せるほか、機能制限はなく30日まで試用できます。
Shade 3D でのモデル製作風景

Shade 3D でのモデル製作風景

・笛本体の径とテーパーを設定し、手持ちの篠笛の寸法を比較して6本調子の指穴を配置。歌口・指穴ともに、円柱でまっすぐ切り抜くシンプルな形状にしました。
・Shade 3D の 3Dプリントアシスタント機能 でモデルをチェック・修正した上で、STL形式で書き出して DMM 3Dプリント にアップロードしました。
・当初、篠笛丸ごとを1つのモデルとして一括出力しようとしていましたが、ナイロンとともに最初に試そうとしたホワイトアクリルでの出力が困難との指摘をうけ、管頭を分離したモデルに修正しました。クリアランス 0.1 mm で摺り合わせる形状としています。こうすると、大甲音の鳴りに顕著に影響する歌口〜管頭の管内スペースがはめ込み具合で微調整できたりします(実は修正後もホワイトアクリルは難しい…ということだったのですが、この素材はまた別の機会にチャレンジしたいところです)。
わくわくしながら発注!

4. 到着・開封!

そしていよいよ造形品が到着!

DMM3Dプリントから到着した箱の中は緩衝材でいっぱい!

DMM3Dプリントから到着した箱の中は緩衝材でいっぱい!

前回紹介したオリジナル実験器具と一緒に発注したのでまとまって届きました。はやる気持ちを抑えながらそっと開封します。篠笛はどんな仕上がりでしょうか…

あれれ、意図していないところに変な段差があるぞ

あれれ、意図していないところに変な段差が。造形エラーでした。

ん、あれっ!? 頭のパーツは分離させたけど、こんなところに段差は設計していないぞ? あわててモデルを再確認しましたが、やはり綺麗な管になっているべきところで出力がズレています。DMM 3D さんに連絡したところ、造形エラーとしてすぐに再出力品を送ってもらえることになりました。早くいじりまわしたかったので残念でしたが、手元のズレた子は着払いで返送しました。 調べてみたところ、3Dプリンターは時折このような出力エラーが発生するようです。いきなり当たったのでビックリしましたが、対応が素早かったので安心できます。 待つこと数日、再出力品が到着しました。こんどこそ…じゃじゃーん!

これまで見たことのないビジュアル。真っ白な篠笛です。

これまで見たことのないビジュアル。真っ白な篠笛です。上から女竹製、市販プラ管、本作品。

うーん、真っ白!薄手のナイロン素材は光をやや透過するため、雪や大理石のような透明感のある白です。 ナイロン出力の表面は前回の作品でも確認したものと同一で、ざらざらっとした感じ。円柱構造のため積層の段差が縦に筋状に入っていますが、これがまた竹の繊維/木の木目のような質感にも見えてマッチしています。

これで管頭パーツを本体パーツに差し込めば篠笛の完成です。さて楽しみましょう! …と行きたいところですが、今回はこれには飽き足らず、仕上げ作業を通じてできる限り篠笛としてのポテンシャルを高めてみました。 特徴/気になるところ

  • 雪のような白い姿は美しいが、表面がざらざらして、やや多孔質な印象。手垢や汚れを吸着しそう。
  • 呂音(低音)がよく響くが大甲音が鳴りにくい(重心がかなり低音より:市販プラ管とは真逆の傾向)。
  • 息→音の変換効率はもっと良さそうなのに発散気味?歌口をスムーズにして対応できるか。

 

次記事:3Dプリンターで篠笛を作ってみた:仕上げ編


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